今回は、高配当・毎月配当が魅力の【VCLT 海外ETF】についてご説明いたします。
海外ETFについて
全体像の把握のために、まずは海外ETFについて説明させてください。
海外ETFとは
ETFとは「exchange traded fund」のことで、日本語では「上場投資信託」と言います。
ETFは、複数の株式や債券などの有価証券を組み合わせてパッケージ化し、1つの金融商品にしたものです。
株式と同様に市場で売買ができます。
日本にもETFはありますが、その海外版なので「海外ETF」と言います。
海外ETFは海外の市場で取引されている商品ですが、日本のネット証券会社を通じて、一口数千円程度から買うことができますので、日本の個人投資家の間でも人気を集めています。
これからご紹介する「VLCT」も海外ETFのうちの一つです。
海外ETFとインデックス(指数)について
海外ETFは、特定の「インデックス(市場の動きを示す指数)」と同じ値動きをすることを目指して設計されています。
インデックスの代表例は、日経平均やTOPIX、ダウ工業株平均といった株価指数です。
日本のメディアの中には、インデックス投資は、投資信託でしかできないと紹介しているものもありますが、それは違います。
海外ETFでもインデックス投資は可能です。
ご説明の通り、海外ETFは、特定の「インデックス(市場の動きを示す指数)」と同じ値動きをすることを目指して設計されているからです。
投資信託と比較した場合の、海外ETFのメリット・デメリット
投資信託と比較した場合の、海外ETFのメリット・デメリットは次の通りです。
海外ETFのメリット
・同じ投資対象(インデックス)であれば、運営コスト(経費・信託報酬)は、海外ETFの方が投資信託よりも安いものが多い。
・海外ETFは、株と同じように市場で取引できる。
・海外ETFは、配当を受け取ることができる。(投資信託でも配当は生じますが、多くは再投資に回されるため実感がわかない)
海外ETFのデメリット
・投資信託に比べて購入方法が分かりづらい。
・購入する際に日本円をドルに替える必要がある。(円のまま買えるものもありますが割高です。)
・配当金は海外現地と日本との両方で課税されてしまう。(確定申告で二重課税の控除を受けられます。後ほどご説明いたします。)
ご覧のようなデメリットもありますが、一度慣れてしまえばデメリット感はありません。
何と言っても、一般的に海外ETFは運営コスト(経費・信託報酬)が低いのが魅力です。
メリットのほうがデメリットをはるかに上回ると思います。
VCLTとは
VCLTは海外ETFの一つです。
「Vanguard Long-Term Corporate Bond ETF」のことを指します。
「VCLT」は「Vanguard Long-Term Corporate Bond ETF」を市場で取引するためのティッカーシンボル(取引コードのようなもの)です。
ティッカーシンボルとは、欧米などで金融商品取引所に上場する株式や海外ETFなどの銘柄を識別するために付けられるコードのことです。
ティッカーシンボルは企業名や代表する商品などに由来する独自のコードであり、例えばiPhoneで有名なアップルのティッカーシンボルは、「AAPL」です。
VCLTの指標(インデックス)
もちろん、VCLTにもインデックス(市場の動きを示す指数)があります。
VCLTのインデックス(市場の動きを示す指数)は、ブルームバーグ・バークレイズ米国社債(10年超)インデックス(Bloomberg Barclays U.S. 10+ Year Corporate Bond Index)です。
VCLTの指標(インデックス)の特徴
投資適格とされている米国の長期社債を幅広くまとめて投資対象としている
ブルームバーグ・バークレイズ米国社債(10年超)インデックス(Bloomberg Barclays U.S. 10+ Year Corporate Bond Index)は、投資適格とされているアメリカの長期社債を、幅広くまとめてその値動きに連動するよう設計されています。
つまり、VCLTを購入すれば、投資適格とされているアメリカの長期社債を、ひとまとめにして投資するのと同じ効果が得られるのです。
VCLTで投資対象としている企業の一部をご紹介します。
どこも有名な企業ばかりです。
- AT&T Inc.
- Oracle Corporation
- GE Capital International Funding Co.
- CVS Health Corporation
- Anheuser-Busch Cos. LLC
圧倒的な経費率の低さ
経費率は0.04%と、破格の低さです。
100万円投資した場合の年間経費はたったの400円です。
年間配当(分配)回数
年12回です。毎月配当を受け取る機会があります。
配当利回り
VCLTは約4~5%台の比較的高めの配当利回りが魅力です。(※記事作成時点)
海外ETFの配当利回りは、証券会社のサイトで確認できます。
マネックス証券の「銘柄スカウター米国株」が分かりやすいですのでおすすめです。マネックス証券で口座を開設すると「銘柄スカウター米国株」を利用することができます。
(口座開設、「銘柄スカウター米国株」のご利用、どちらも無料です。)
調べ方をご紹介します。
ログイン後、「米国株・中国株」を選択。
「銘柄スカウター米国株」をクリック。
海外ETFのティッカーシンボル(銘柄を識別するために付けられるコード)を指定する。
(以下の画像は「VCLT」を指定した例)
対象の銘柄をクリック。
真ん中あたりに配当利回りが表示されます。
値動き(チャート)
過去の値動き(チャート)はこちらです。
過去にさかのぼってチェックすることもできます。
スマートフォンの場合は横向きが見やすいです。
債券型の海外ETFの注意点
債券型の海外ETFにはご注意いただきたい点があります。
このETFだけの特徴ということではないのですが、債券を対象とした投資の場合、一般的に、元本と利息(または配当)には相反関係がありますので注意が必要です。
例を挙げてご説明します。
例えば、アメリカのような先進国とブラジルのような新興国では信用力に違いがあります。
仮にアメリカ、ブラジルのそれぞれから「100万円貸してくれたら5年後に110万円にして返す」と言われたら、あなたはどちらの国に貸すでしょうか。
多くの方は、信用力がより高いアメリカに貸すことを選択すると思います。
どうしてもお金を借りたいブラジルは、以下の選択をすることになります。
- 元本を安く設定して、より魅力のあるものとする(例、95万円貸してくれたら、5年後に110万円にして返すと言う)
- 見返り(利息や配当)を高めて、より魅力のあるものとする(例、100万円貸してくれたら、5年後に120万円にして返すと言う)
いずれの場合であっても、ブラジルはアメリカに比べて信用力が低いため、同じ額を借りるために多くのコストを費やすことになります。
これが債券を対象とした投資における、元本と利息(または配当)の相反関係の概要です。
したがって、債券型の海外ETFには、一般的に次のことが言えます。
・元本の価格が上昇するとき、配当利回りは下落する。
・元本の価格が下落するとき、配当利回りは上昇する。
頭に入れておくといいと思います。
ここからは購入方法、メリット、デメリット、向いている投資スタイル、配当金、長期保有の場合の結果についてご説明いたします。
メリットは?
VCLTには次のようなメリットがあります。
- 米国債が多く組み入れられているETF(BNDなど)に比べて、高めの配当が期待できる。
- 株式型の海外ETFに比べて価格変動のリスクは低い。
- 経費率が破格に低い。
- 毎月配当がもらえる。
- 為替レート変動によっては評価益を生み出すことができる。
BNDについてはこちら(↓)をご覧ください。
円高と円安のメリット・デメリットと投資のタイミングについてはこちら(↓)をご覧ください。
デメリットは?
メリットもあればデメリットもあります。
いくら「投資適格」とは言っても対象は企業ですので倒産などのリスクはあります。
どんな企業にも米国政府ほどの信用力はありません。
そのため、米国債が多く組み入れられているETF(BNDなど)に比べ、価格変動リスクが高くなります。
価格変動リスクのほかには次のようなデメリットがあります。
- 株式型のETFのような値上がりは期待できない。
- 為替レート変動によっては評価損が生じてしまう。
どのような投資スタイルの人に向いているの?
VCLTは、以下のような投資スタイルの方に向いていると思います。
- 海外ETF自体の値上がりよりも安定した配当を望む方
- 他の資産(株式、不動産など)との分散効果を狙いたい方
- 待機資金を有効活用されたい方
配当金は実際にはどれくらいもらえるの?
ざっくり30%は税金で引かれる
けっこう税金が取られます。
海外ETFや海外の株などからの配当収入を日本国内の居住者が得た場合は、現地 (海外) で課税され、さらには日本でも課税されます。
これを二重課税と言います。
現地(アメリカ)で10%、さらに日本で約20%が配当に課税されます。したがって、ざっくり30%分は税金で引かれてしまうとご理解ください。
確定申告で二重課税の控除を受けられる
確定申告を行うことで、条件を満たす場合は二重課税分の控除を受けることができます。
これを外国税額控除といいます。
詳しくは以下(↓)の記事をご覧ください。
長期間保有した結果はどうなるの?
VCLTの長期保有のぶっちゃけ話です。
想定の範囲内でしたが、VCLTを5年以上継続しても評価益は約10%程度でした。なお、この評価益には為替の影響も含まれています。
VCLTで大きく儲けることは期待できないととらえるのがいいと思います。
株価の推移は以下の通りです。
ご覧の通り、約10年の間、80ドルと110ドルの間を行ったり来たりしているという感じです。
私が保有する株式型のETFの中にはVTI、VTといった、評価益が80%、90%と約2倍に近づいているものもあります。
それらに比べると、VCLTに派手さはありませんが、リスク分散と安定的な配当受け取りには十分期待ができると思います。
したがいまして、VCLTを投資対象として検討する場合は、VCLTに資産を全額つぎ込むのではなく、分散効果を高めるために、投資資産の一定の割合をVCLTに投資するのがよろしいかと思います。
なお、私の場合、今はVCLTはすべて売却しています。
分散投資のメリット・デメリットについてはこちらをご覧ください。
どうやって買うの?
海外ETFを購入できる日本の証券会社は限られています。
おすすめの証券会社は以下の通りです。それぞれリンクをご案内しています。
なお、私は複数の証券口座の開設をおすすめしています。
理由は次の通りです。
・それぞれの証券会社ごと特徴やメリットがあり、それらを使い分けることができる。
・どれか一つの証券口座にシステムダウンやメンテナンスによる使用不可期間があっても、他の証券口座を代わりに使うことができる。
・資産を複数の証券口座に分散して保管することで、万一のサイバー攻撃、詐欺、不正などの被害を最小限することができる。
・口座は無料で開設できる。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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